飲食業界の新しい食トレンドとビジネス

飲食業界における食トレンドの変遷とその重要性

ここ数年、飲食業界では新しい食トレンドが次々と生まれています。環境問題や健康志向の高まりを背景に、食のあり方が消費者のライフスタイルに大きな影響を与え、特に若い世代を中心に多くの注目を集めています。飲食店がこうしたトレンドにいち早く対応することで、新規顧客を獲得し、ビジネスチャンスを拡大する可能性が広がっています。ここでは、飲食業界で注目される代表的なトレンドと、それがどのようにビジネス機会につながるかについて詳しくご紹介します。

1. サステナブルな食材の使用とエコ意識の高まり

サステナビリティへの関心が高まる中、エシカル消費を意識する消費者が増えています。

エシカル消費：人や社会、環境、地域に配慮した消費行動のこと
物やサービスを購入する際に、倫理的な価値観や持続可能性を重視し、社会問題の解決につながることを意図して行います。
エシカル消費の具体例としては、次のようなものがあります。

・リサイクル商品を選ぶ
・エコバックやマイ箸、マイボトルを使用する
・冷蔵庫の中を確認して必要なものだけを買う、食材はすべて使い切る
・エコ商品や環境への配慮に関する認証がある商品を購入する
・詰め替え商品を選び、詰め替え容器を繰り返し使う

エシカル消費は、2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標（SDGs）の17の目標のうち、12番の「つくる責任 つかう責任」に関連する取組です。また、企業においても重要な取り組みとして重視されており、社会的・環境的な責任を果たすことが求められています。

また、食材の選定やメニューの開発において、環境に優しい選択肢を提供することが求められています。具体的には、オーガニック食材、持続可能な漁業で採られた魚、フェアトレード認証のある商品などが好まれる傾向にあります。近年では、食品ロスを削減する取り組みも重要視されており、飲食店がフードロスを最小限に抑えた提供方法を取り入れることで、エコ意識の高い消費者に共感を得られます。

フェアトレード認証とは
開発途上国の原料や製品が公平な条件で取引されていることなどを認証する制度です。フェアトレード認証は、国際フェアトレードラベル機構（Fairtrade International）が定めた基準にもとづき行われています。

この流れに乗り、飲食店では「エコ・メニュー」を導入したり、地元農家と連携してローカルフードの提供を行うなどの工夫が効果的です。エコ志向の消費者層をターゲットに、地球環境を意識したメニューやサービスを打ち出すことで、他の飲食店との差別化を図ることができます。

2. プラントベースフードと代替肉の需要増加

植物由来の食材や代替肉を用いたプラントベースフードの人気も急増しています。従来のビーガンやベジタリアンの枠を超え、健康や環境負荷を考慮してプラントベースの選択肢を積極的に取り入れる消費者が増えています。特に大手飲食チェーンが代替肉を使用したメニューを導入したことで、この流れは一般消費者にも広がりつつあります。

TPCマーケティングの調査によると日本では、2019年度の178億円から2020年度は246億円と38%の増加、さらに2010年度はわずか48億円の市場であったことを踏まえると、10年で5倍程度まで拡大していた市場であることがわかります。
（TPCマーケティングリサーチ株式会社「2020年植物性代替食品市場の最新動向と将来展望」引用）

飲食店にとっても、プラントベースメニューを提供することは大きなビジネスチャンスです。一般的な肉と比べて調理方法が異なるため、新たな調理法や独自の味付けを探ることで、ユニークなメニュー展開が可能です。また、ビーガン対応のスイーツや、動物性原料を使わないスープやサラダなど、さまざまなバリエーションを加えることで、顧客の興味を引きやすくなります。

3. ヘルシー志向と免疫力向上を意識した食事の提案

健康志向の消費者に向けて、低糖質や高タンパク、グルテンフリーといった栄養価の高い食事が求められています。特に昨今のパンデミック以降、免疫力向上を意識したメニューやスーパーフードの需要が増えました。飲食店では、アサイーやチアシード、ケールなど、免疫力をサポートするとされる食材を取り入れたメニューを提案することが消費者の注目を集めやすいです。

健康志向のメニューを提供することで、日常的に健康維持を考える層にリーチでき、リピーターの獲得にもつながります。栄養バランスを考えた食事メニューの充実や、「体に優しい料理」としての訴求が顧客の心をつかむカギとなります。

4. SNS映えするビジュアルフードの進化

現代の飲食店において、SNS映えするビジュアルフードの提供は欠かせません。食事やカフェでの時間をシェアするために、消費者は「見た目」にもこだわりを持っています。特にカラフルなスムージーボウルやデコレーションの施されたドリンク、アートのような盛り付けが施された料理は、若年層やインフルエンサーの関心を引き、拡散力が高まります。

このトレンドを活用し、店のシグネチャーメニューとして視覚的に優れた料理を開発することが、ブランディングや集客に有効です。SNS上での話題性が、来店のきっかけや口コミの拡散につながることが多く、結果的に集客の効率が向上します。

まとめ：トレンドに柔軟に対応する飲食店の未来

飲食業界は、常に変化する消費者のニーズに応えることで成長を続けています。サステナブルな食材、プラントベースフード、健康志向、SNS映えといった食トレンドにいち早く対応することで、飲食店は時代にマッチした顧客体験を提供し、競争力を高めることができます。飲食店の運営においては、常に最新のトレンドを意識し、時代に合ったビジネス展開を行うことで、持続的な成長を実現するチャンスが広がります。